特集
在宅・持続治療装置への展開:コンパクト透析機器の今
血液透析が「病院で受ける治療」から、「自宅や生活の場で続けられる治療」へ――。在宅・持続治療装置をめぐる動きが世界で加速しています。
ここでは、今の流れと海外の代表的な機器、そして今後の期待についてコンパクトに整理します。
今の流れ:施設透析から「自分で選ぶ透析」へ
これまで血液透析は、専用設備を備えた医療機関で行うのが当たり前でした。しかし近年は、
在宅血液透析(Home HD) や、よりコンパクトな透析装置の開発が進み、
「どこで・どのように透析を受けるか」を患者自身がある程度選べる方向へとシフトしつつあります。
- 透析液使用量を大幅に減らす再生型の技術
- 本体を小型・軽量化した在宅向けの設計
- 遠隔モニタリングやアラーム機能による安全性の確保
- 水処理・電源などインフラ要件を抑える工夫
「通院が前提の治療」から、「生活の中に透析を組み込んでいく」という考え方への変化が、世界的に見られています。
海外で登場している主な機器
在宅透析機器
NxStage(アメリカ)
在宅血液透析用として広く知られている小型装置です。家庭内での使用を前提に設計されており、旅行先でも利用しやすい点が特徴です。
- 小型で取り扱いやすい本体サイズ
- 在宅血液透析(Home HD)として豊富な臨床実績
- 操作が比較的シンプルで、患者自身による管理を想定
次世代ホーム透析
NeoKidney(NextKidney/欧州)
欧州の研究プロジェクトとして開発が進む次世代ホーム透析装置です。持ち運び可能なサイズ感と、透析液の再生技術が大きな特徴です。
- 重量はおよそ 10kg 程度を目標としたコンパクト設計
- 透析液 5L 程度で 1 セッションを完結させる再生型システム
- 家庭での使用や災害時・遠隔地での利用も視野に入れた設計
市場動向
ポータブル透析機器市場の拡大
在宅透析需要の高まりを背景に、ポータブル透析装置を含む血液透析機器市場は、2025〜2030年にかけて成長が予測されています。
技術革新だけでなく、ビジネス面でも注目される分野になりつつあります。
これから開発に期待したいポイント
在宅・持続治療装置は、患者の生活の幅を大きく広げる可能性を秘めています。一方で、実際の普及に向けては、いくつかの課題も指摘されています。
- 在宅環境でも安心して使えるレベルまでの 安全性の向上
- 水処理・電源・設置スペースなど インフラ要件のさらなる軽減
- 患者・家族に対する 教育体制とサポート体制 の整備
- 装置価格や保守費用に対する 保険・制度面での支援
- 各国の事情に応じた 実証研究とエビデンスの蓄積
技術・制度・支援体制がかみ合ってくることで、「通院前提の透析」から「ライフスタイルに合わせて選べる透析」へと、現場の選択肢が変わっていくことが期待されます。
参考記事・情報源
- 在宅透析の未来(Home Dialysis Central):
A vision for the future of kidney replacement therapy
- 次世代透析装置レビュー(ScienceDirect):
The future of technology-based kidney replacement therapies
- NeoKidney(欧州プロジェクト):
PORTADIALYS / NeoKidney project
- NxStage(Fresenius Medical Care):
Home hemodialysis overview