経鼻胃管

経鼻胃管に関する看護技術のポイント

経鼻胃管は、鼻から胃まで細い管を挿入して栄養投与や胃内容物の排出を行うための基本的な看護技術です。
患者さんは不安を感じやすく、安全確認も重要になるため、ひとつひとつの手順の意味を押さえておくことが大切です。

経鼻胃管とは

経鼻胃管は、鼻腔から挿入したチューブを食道を通して胃まで到達させ、
栄養投与・薬剤投与・胃内容物の排出 などを行うための方法です。
患者さんの不快感や不安が出やすい手技なので、事前の説明と観察が欠かせません。

⭐経鼻胃管:チューブの名前(物)
⭐経鼻経管栄養:栄養を入れる行為(方法)
※「経鼻胃管を入れたら=栄養すること」と思ってしまうけど,でも実際には 排液目的の患者にも経鼻胃管が入る!

挿入前の確認と体位

挿入前には、まず患者さんの状態をアセスメントします。
意識レベル、鼻腔の通り、嚥下機能、誤嚥リスクなどを確認し、どちらの鼻から挿入するかを判断します。
体位は 半坐位(30〜45°) や座位で頸部をわずかに屈曲させたスニッフィングポジションで行う。半坐位は呼吸がしやすく誤嚥予防にもつながります。座位が不可能な場合は,左側臥位をとらせる。気道を保護する気管内チューブでの換気を受けている患者には,座位または必要に応じて仰臥位の状態で経鼻胃管を挿入することができる。
胃管の挿入長は「鼻根部 → 耳介 → 剣状突起」のNEX法で測定し、挿入の目安とします。

  • 意識レベル・鼻腔の通り・嚥下機能を確認する
  • 誤嚥リスクを評価する※誤嚥の危険のある患者は適宜、左側臥位とする。
  • 体位は半坐位(30〜45°)を基本とする
  • NEX法(鼻根部→耳介→剣状突起)で挿入長を測定する

挿入時のポイント

挿入時は、鼻腔や粘膜を傷つけないように水溶性潤滑剤を用い、頭部を軽く前屈してもらうことで、気道ではなく食道に入りやすくなります。咽頭付近まで管が到達したら、患者さんに「ごくん」と飲み込んでもらい、そのタイミングに合わせてゆっくり進めます。
咳き込みや強い痛み、呼吸苦などが出た場合は、無理に進めず一度中止することが重要です。

  • 水溶性潤滑剤を使用して鼻腔への刺激を減らす
  • 頭部は軽い前屈位にする
  • 嚥下(飲み込み)に合わせてゆっくり挿入する
  • 痛み・咳・呼吸苦があれば中止し再評価する

チューブ位置の確認

挿入後は、チューブ先端が確実に胃内にあるかを確認します。
最も信頼性が高いのは、胃内容物を吸引して pHを測定する方法(目安 pH1〜4) です。
必要に応じてX線で確認することもあります。送気して聴診する方法(ブイ音の確認)は、現在は補助的な手段とされることが多いです。

  • 胃内容物を吸引してpH(1〜4)を確認する
  • 疑義がある場合はX線で位置を確認する
  • 送気聴診は補助的手段として扱う

挿入後の固定とケア

位置確認後は、鼻翼にチューブを固定します。皮膚トラブルを予防するため、保護材を用いるとよいでしょう。
挿入長の目安をテープに記入しておくと、後日の観察で「抜けかけ」や「押し込みすぎ」に気づきやすくなります。
経管栄養の投与中および投与後も半坐位を維持し、誤嚥を予防します。
また、チューブによる不快感や感染リスクを減らすため、口腔ケア・鼻腔ケアも継続が必要です。

  • 鼻翼にチューブを固定し、皮膚保護材でトラブルを予防する
  • 挿入長(目安のcm)をテープなどに記入しておく
  • 経管栄養の投与中〜投与後もしばらく半坐位を維持する
  • 口腔ケア・鼻腔ケアを定期的に行う

観察すべき合併症

経鼻胃管では、誤嚥性肺炎、鼻腔や咽頭のびらん、チューブ閉塞、腹部膨満、下痢などの合併症が起こる可能性があります。
患者さんの表情や咳、呼吸状態、腹部の張りなど、いつもと違う変化がないかを継続的に観察し、必要に応じて医師へ報告・相談します。

  • 誤嚥性肺炎(咳・発熱・SpO2低下など)
  • 鼻腔・咽頭のびらんや疼痛
  • チューブの閉塞・屈曲
  • 腹部膨満・下痢・便秘などの消化器症状

経鼻胃管の看護は、挿入手技だけでなく、挿入前の準備・挿入後の位置確認・固定・日々の観察 が,すべてつながって安全を支えています。ひとつひとつの理由を押さえておくことで、臨床でも落ち着いて対応できるようになります。

まとめ

経鼻胃管とは?ギュッとまとめて説明!

経鼻胃管は、鼻から胃へチューブを挿入し、栄養投与や胃内容物の排出を行う基本的な看護技術である。挿入前は意識レベル、鼻腔の通り、嚥下機能を確認し、体位は誤嚥予防のため半坐位が望ましい。挿入時は水溶性潤滑剤を使い、頭部軽度前屈で嚥下に合わせて進める。挿入後は胃液吸引によるpH確認(1〜4)が確実で、必要時はX線を使用。固定後は半坐位保持、口腔・鼻腔ケアを継続し、誤嚥、びらん、閉塞、腹部膨満などの合併症を観察する。