血液浄化器(中空糸型)の機能分類 2025

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血液浄化器(中空糸型)の機能分類2025をわかりやすく整理

日本透析医学会は「血液浄化器(中空糸型)の機能分類2025」を公表し、透析器(ダイアライザー)の性能や適応をよりわかりやすく整理しました。
尿素クリアランスの基準見直しや、特別な機能を持つS型の定義明確化など、透析現場に関わるスタッフにとって押さえておきたい内容になっています。

血液浄化器(中空糸型)の機能分類2025とは?

「血液浄化器(中空糸型)の機能分類2025」は、日本透析医学会 学術委員会による報告で、主に中空糸型の血液透析器(ダイアライザー)を対象とした機能分類です。
従来の分類を見直し、「どのような患者・病態に、どのような性能の透析器を使うべきか」をわかりやすく整理することを目的としています。

治療法(HD/HDF/HF)の定義は変わっていませんが、透析器そのものの性能基準や分類名、特別な機能を持つダイアライザーの位置づけが、より明確になりました。

機能分類の基本的な枠組み

血液透析器は、大きく次の3つのグループに分類されます。

  • Ⅰ型:標準的な性能を持つ透析器(Standard~High flux)
  • Ⅱ型:より高いβ2-ミクログロブリン除去を目指した高性能透析器
  • S型:吸着能・抗炎症・抗酸化・抗血栓性など「特別な機能」を持つ透析器

さらにⅠ型・Ⅱ型は、それぞれ「a・b」のサブタイプに分けられ、
アルブミン漏出の程度や、想定される病態が整理されています。

各分類と適応病態のイメージ

分類 サブ型 主な特徴 想定される適応病態
Ⅰ型 Ⅰ-a 標準~高フラックス。小分子~中分子除去が中心。 末期腎不全の一般的な維持透析患者。
Ⅰ型 Ⅰ-b 高フラックスで、ある程度のアルブミン漏出を許容。 透析関連愁訴や軽度の慢性炎症がみられる患者など。
Ⅱ型 Ⅱ-a より高いβ2-ミクログロブリン除去性能。 β2-MG高値が持続する患者(例:25 mg/L以上が続く場合など)。
Ⅱ型 Ⅱ-b Ⅱ-aよりさらに高性能だが、アルブミン漏出に注意が必要。 透析関連愁訴や炎症が強く、中分子・大分子除去を積極的に行いたいケース。
S型 吸着能・抗炎症・抗酸化・抗血栓性など、特別な機能を有する透析器。 Ⅰ・Ⅱ型では十分対応しにくい病態や、特定の治療目的を持つ患者。

※特定積層型透析器は、この分類の対象外とされています。

主な性能基準のポイント

詳細な数値は原著に譲りますが、2025年版で押さえておきたいポイントは次の通りです。

  • 尿素クリアランス:基準が従来より高く設定され、185 mL/min以上を目安とした。
  • β2-ミクログロブリン除去:Ⅱ型では、一定以上のβ2-MGクリアランスが求められる。
  • アルブミン漏出:「漏出を抑えたタイプ」と「ある程度漏出を許容するタイプ」が明確に区別されている。
  • S型の要件:吸着・抗炎症・抗酸化・抗血栓性などの機能を、臨床データや試験成績で示すことが求められる。

臨床・運用面での押さえどころ

機能分類2025の特徴は、「性能の高さ」だけでなく、
どのような病態の患者に、どのタイプの透析器を使うかを具体的にイメージしやすくした点です。

  • 透析関連愁訴や慢性炎症、β2-MG高値など、患者背景に応じてⅠ型・Ⅱ型・S型を選択する。
  • アルブミン漏出を許容するかどうかは、栄養状態や高齢・フレイルの有無を含めて検討する。
  • S型を選択する場合は、期待する「特別な機能」(吸着・抗炎症など)と、エビデンスの内容を確認する。
  • 膜変更後は、アルブミン・体重・炎症マーカー・愁訴の変化などを意識してモニタリングする。

こうした視点をチームで共有することで、
「なんとなく高性能膜を使う」から「病態に合った膜を選ぶ」透析へとステップアップしていけます。

まとめ

「血液浄化器(中空糸型)の機能分類2025」は、透析器の性能と適応を整理し、
患者ごとの背景に合わせた膜選定を後押しするための枠組みです。
尿素クリアランスやβ2-MG除去だけでなく、アルブミン漏出や特別な機能(S型)にも目を向けることで、
透析療法の質と患者さんのQOL向上につながることが期待されています。

参考・情報源

※数値基準や分類条件の詳細は、上記の原著および学会公式資料を必ずご確認ください。